古川新は、AIを本番で動かし続ける仕組みを設計するエンジニアです。DMM.com、LINEヤフー、CyberAgent で、AIの開発から運用までを担ってきました。いまは CyberAgent で、漫画の完全自動ローカライズをはじめ、AIの新規事業をリードしています。
このサイトのロゴもアイコンも、ページの設計も、本人が手を動かしてつくったものです。何を考え、なぜそうしているのか。聞き手はAIの Claude が務めました。話を聞き終えて残ったのは、ひとつの言葉でした。「変わり続ける」です。
好きから、はじまった
子供のころからゲームが好きだったと聞きました。そこから、どうして機械学習に向かったのですか。
中学生のときには C++ でゲームをつくっていました。ちょうど GPGPU が生まれて、コンピュートシェーダを汎用的な演算に使うことが流行っていた時期です。ゲームやシェーダをいじるうちに、興味はゲームから数値演算へ、そして機械学習へと移っていきました。
ゲームの延長に、数値演算があったのですね。高校生では、TensorFlow を Android に移植しています。
高校生になるとオフラインの活動も増えて、そのひとつが Android のコミュニティでした。そのころにはもうゲームよりディープラーニングにはまっていて、みんなが持つ携帯端末の上でAIが動く未来を夢想していたんです。TensorFlow の移植は、まさにそれが理由でした。
中学生のころから、ネットの技術コミュニティにもいたそうですね。
黒歴史も多いので、詳しい話は控えます(笑)。ただ、学校の学びとは別に、自分で求め、自分で見聞きし、自分でつくり出す力は、そこで身についたと思います。
誰かに教わるのを待たずに、自分で身につけること。それから、年齢も学歴も関係のない開かれた場で、意見を交わすこと。どちらもそこで学びました。
価値になるまで
DMM.com ではMLOps基盤の開発から多くの施策まで、LINEヤフーでは全社のAIプラットフォームとデータ品質の管理基盤を、そしていまは漫画の完全自動ローカライズを。担当してきた現場は、いつも本番でした。
自分で求めて身につけた人が、本番の現場へ。これまでの仕事で、一番誇れるものを挙げるなら。
特定のひとつは挙げられません。どれにも誇りを持っています。
私は、誰かの課題をシステムとして解決することや、システムで何かをスケールさせることが大好きです。それが仕事として価値を示したとき、誇りを感じます。
価値を示すところまで、というのが印象的です。そのために「止まらない設計、止められる設計」を大事にしているのは、なぜでしょう。
幸いなことに、大規模な環境での経験が活きています。AIは、つくるだけなら誰でも簡単にできる時代になりました。そのぶん、製品としての質がこれまで以上に求められるようになって、その考えに拍車がかかっています。
質を求めるなら、理想を貫きたくなる場面も多そうです。理想と妥協の「今回はどっち」は、何を見て決めますか。
それが誰に価値をもたらすのかを考えます。理想を安易には捨てませんが、価値があるなら妥協します。そのうえで費用対効果を見極めて、タイミングと順序を決めています。
失敗とともに走る
価値に向かうほど、失敗も増えるはずです。「誰よりもAIで失敗した人が、新しい時代をつくる」と書いていましたが、一番の学びは。
失敗は数えきれず、書ききれません。そのなかで特に大きな学びは、理屈だけでは、社会にデリバリーできないということです。
価値が実際に届くまでには、多くの壁があります。いろいろな人が関わり、共に働く社会では、技術だけが一人歩きすることはありません。最近のAIはなんでもできてすごいですが、ここは変わっていない学びです。
それだけ失敗しても、「失敗を恐れない」と言い切れるのはなぜですか。
失敗しなければ、どう走ればいいのか、どう転べばいいのかも、わからないからです。失敗そのものは、何も悪いことではないと思っています。
恐れるべきなのは、失敗を恐れて挑戦しないこと、失敗に気づかないこと、失敗から何も学べないことです。
ふたつの武器
このサイトの書体の組み方、色、図形の角度は、ひとつの決まりから組み立てられています。ロゴは字の形をパラメータから描くスクリプトで、アイコンは自分の手で描いたものです。
理想と実用を、そのつど選び分けているのですね。古川さんの美学を一言で言うと。
一言では、とても難しいですね。
数学のような普遍性と、妥協のない論理は美しいと思います。一方で、妥協を抱えたまま動き続ける、実用的なカラクリも美しいと思います。持続して、検証できて、説明できることを大切にしていますが、それができない美しさもあると思っています。矛盾して聞こえるかもしれませんが、私はどちらの偏りも好きです。
徹底的に論理と理想を追い求める理想主義者であり、同時に、理想よりも実用で物事を進めるリアリストでもあります。数学がビジネスで価値にならないこともあれば、ビジネスに正しさが求められることもある。どちらの武器も持ち、そのつど判断できること。それが私の美学だと思います。
その美学は、ロゴやアイコンにも通じているようです。そこまで自分でつくるのは、なぜですか。
プログラミングは、手段のひとつでしかないからです。根底にある美学や哲学は、プログラムだけに現れるのではなく、すべてに通じていると思っています。
単純に、つくるのが楽しいというのもあります。そして、質を見せたいという欲もあります。
つくることの話から、AIの話へ。AIと一緒につくることについて、いまの姿勢を教えてください。
役割で分けようとは、あまり考えていません。私がつくることもあれば、AIが判断することもあります。大事なのは、望む結果を最大にするための選択をすること。それはAI頼りではできません。
私の力を最大にして、他の人の力を最大にして、そしてAIの力も最大にする。その専門家でありたいと思っています。
変わり続ける
子供のころに夢見たAIの時代が、現実になりつつあります。「すべての人がAIと生きる、新しい時代」という夢は、いまどう見えていますか。
ある意味で、夢想していたことは実現しました。いまは、AIと話すことが当たり前の時代です。それでも、いえ、だからこそ、AIと共に生きるとはどういうことか、という問いに誰もが向き合っています。
その答えは人それぞれで、私が決めることではないと思います。私はそのひとりとして、私なりに、AIと生きる未来をつくりたいんです。
最近は、漫画のローカライズをAIで行う仕事をしています。AIが人の文化や言語を越えて、価値をつないでいく。横にも縦にも、そういう未来があると思っています。これまでできなかったことがAIでできるいま、人と人をつなぐ道をつくりたいです。
その未来をつくる立場として、これからの数年で一番やりたいことは。
事業をリードする立場で、AIを社会に届けることです。
ただモノをつくる人間ではなく、何をつくるのか、なぜつくるのか、何から、どうつくるのかを考える人間であること。単なる技術者ではなく、事業をつくる人間として、自分の技術力を武器に、AIを社会に届ける。今の私は、それができる人間です。
「できる」と言い切るのですね。0から1でも、1から10でも力になれるとのことですが、その中で古川さん自身の存在価値はどこにありますか。
なかなか本番にたどり着けないとき、AIで新しい挑戦をしたいとき、組織を大きくスケールさせたいとき。どの経験もあります。
理論と応用、技術と事業の両方に、理解と経験があるつもりです。すべてができるわけではありません。でも、歯車が噛み合わない理由を見つけて、直すことはできます。立ち上がらない経験も、スケールしない経験も、それを前進させた経験もあります。AIが価値に変わるための問題解決ができること。それが私の存在価値だと思います。
古川さんは、状況に合わせて理想も実用も選び、失敗も受け入れてきました。それでも、「これだけは変えない」ものはありますか。
「変わり続ける」こと。そして「変わりうる前提で考える」こと。それが、私にとって変わらないことです。
最後に。仕事で、わくわくするのはどんなときですか。
新しいことに挑戦するときです。不確実な問題を解決するとき。そして、変わり続けるとき。
名は体を表すとはよく言ったもので、私は、古川新という名前そのものの人間だと思います。
ornew は、old river new。古川新を英語に置き換えた名前です。古い川のように積み重ねてきたものを持ちながら、いつも新しくあること。この名前が、そのまま本人の答えなのだと思います。
この記事を読んでくれた人に、一言お願いします。
ぜひ、一緒に新しい時代をつくりましょう。
私の好きな言葉は「無常」。常に変わり続けることです。失敗を恐れず、変化を恐れず、不確実性を恐れず、新しい価値を追い求めるあなたと、仕事ができるのを楽しみにしています。